私の息子は重症心身障がい児です。
全介助ですが元々介護ベッド要らない派でした。
リビングの畳スペースが息子の特等席で私と添い寝で寝ていました。
ぼんやりと介護ベッドにした方が良いのかしらと思っていましたが場所とお金もかかるし、息子と離れて寝るなんて寂しい。
体重も増えてはいるが抱っこも負担ではない。
今すぐ必要ないけれどまだまだ先でいいかと思う程度。
ただ「いつのタイミングで設置したらいいのだろう?」と疑問は常にありました。
リハビリの先生や訪問看護師さんに相談しても明確な答えもないし、そもそも障害や医療的ケアの程度によって介護もかわる。
介護ベッド設置の時期に正解はない。
でも設置して1年経ちますが夫婦で
「買ってよかった!」
「あって損なし!」
といういう結論に至りました。
わが家の買ってよかった物ナンバーワンに入るくらいです。
今回は重症心身障がい児の母として介護ベッドを家に設置するまでと設置したタイミング、メリットデメリットをまとめました。
大前提として障害の程度により介護ベッドの必要性は変わってきます。
幼い時から介護ベッドが必要な子もいるし成人しても畳敷きの布団や普通のベッドを使っている人もいます。
各家庭のベストは違って当たり前で決して介護ベッドを推奨しているわけではありませんのでその点をご理解ください。
重度心身障がい児者を介護する親に起こる素朴な疑問を解消する参考材料になればいいと思っています。
目次
家族構成
まずはわが家の家族を紹介します。
家族構成
☆私(40代)→ズボラで楽観的。基本ワンオペ。特技:医療ケア
☆息子(中1)→重症心身障がい児。全介助、発語なし、胃ろう、噴門形成、喉頭分離。特技:寝ないこと
学校からの電話&呼び出し多めで緊急入院も頻繁にある息子と息子のために建てた平屋の注文住宅に家族3人で住んでいます。
▼合わせてコチラもどうぞ▼
>>>重症心身障がい児の母となった私の記録①
介護ベッドは不要 だけど気になるアイツ
介護ベッドとは高齢者や身体的に障害のある人のために作られたベッドで高さ調整機能・背上げ足上げ機能・安全バーや柵などの特徴がある。マットレスも褥瘡を防ぐために通気性の良い素材が使用されることが多いです。通常のベッドと比べて、機能や設計が工夫されており、利用者の快適さや介助をサポートするための機能が備わっています。
これまで療育センターやリハビリ入院で知り合った重症心身障がい児と言われる息子のお友達で介護ベッドを置いている子は誰1人としていませんでした。
皆が介護ベッドを設置しない理由としては・・・
- 年齢が若い、幼い
- 体重が軽い
- 抱っこが多い
- 添い寝が基本
- 部屋で1人寝なんて絶対無理
と様々です。
だから私が介護ベッドを話題に出せば・・・
どんな感じか教えてね!
と、まあこんな感じ。
はなから眼中にない人の方が多かった気がします。
障がい児の親は子どもの発育と情緒の成長のために少しでも良い情報を得ようと必死な生活だし毎日の育児が大変だから介護ベッドとか二の次なんですよね。
私もまだ添い寝でいいと思っていたし1人寝させるならまずは普通のベッドからと考えていました。
何より・・・
と考えながらもいつかはお世話になるんだろうなと気になる存在。
そんな生活を何年も過ごしていました。
介護ベッド設置前の生活
息子の生活圏はほぼリビングの小上がりの畳スペースでした。
ここに年中布団を敷いて寝かせていました。
寝ることはもちろん、オムツ替えや排せつ、リハビリもです。
畳の角に座って息子を抱っこし食事介助したり、寝かせて経管栄養をしたり生活のすべてをそこで担っていました。
障がい児のために作られた座位保持椅子もありましたがズボラな私に放置されることしばしば。
ダメなんですけど、ちゃんと座らせた方がいいんですけど、めんどくささが勝ってしまってました。
あと小上がり畳スペースの使い勝手が良すぎたんですよね。
自分の余力がある時しか座位保持椅子に座らせてないな~、今も( 一一)
▼リビングの畳スペースについての記事はコチラ▼
>>>リビング小上がりの使い勝手はどうなの?住んで感じたメリットとデメリット
介護ベッド設置のきっかけ
息子が11歳の時でした。
命が消えてしまいそうなほど危なく大変な入院と手術を経験しました。
約5ヵ月間の入院中、身長も伸び側弯も進行、体の緊張具合が以前と変わってしまったのです。
呼吸状態や嚥下機能も低下したため唾液による誤嚥も頻発。
喉頭分離をして医療的ケアが増えたことが大きなきっかけとなりました。
喉頭分離後、これまでと同じように畳スペースでの生活を想像したら不安が募りました。
気切部の吸引や日々のケア、息子の体の変化など以前の息子とはがらりと変わってしまったから。
それに病院の介護ベッドの使いやすさを約5か月間の間に実感したというのも事実。
おそらくこの大病がなければ介護ベッド設置には至らなかったと思います。
そんなこんなで息子のため自分の介護しやすさのためにも重い腰を上げたのです。
喉頭気管分離術とは?
重症心身障害の方は,喉の機能が低下しており誤嚥を起こされることがしばしば見られます.嘔吐するものを誤嚥することに対しては,胃食道逆流防止手術で対応することは可能ですが,唾液の流れ込みまでは防ぐことができません.また,気管切開では完全に唾液の流れ込みを防止することは不可能です. この気管への唾液の流れ込みを完全に防止するのが喉頭気管分離手術です.気管を離断し上の気管(口側)は閉鎖してしまいます.また,下の気管(肺側)を気管切開のように皮膚にあける事によって,呼吸できるようにします.これによって口の中と気管が分離されますので,誤嚥は完全に防止できます.
引用元:日本赤十字社 姫路赤十字病院
退院までに環境を整えようと業者や役所に走りました。
日常生活用具の申請が降りて息子が家に帰ってくるまでに介護ベッドの設置も完了。
あとわが家は褥瘡予防に高機能のエアマットレスも同時に購入しました。
寝室に普通のベッドと息子の介護ベッドが2台並び、周りに医療機器や息子のケアグッズを置きました。
介護ベッドはパラマウントベッドのクオラONE(3モーター)にしてエアマットは株式会社モルテンのオスカーにしました。
1年使って分かった介護ベッドのメリットとデメリット
ここからは私の感じたメリットデメリットです。
まずはデメリットから。
デメリット①場所をとる
ベッドですからそこそこ場所は取ります。
息子仕様に建てた平屋の注文住宅ですが以前は寝室を普通のベッド2台で埋めていました。
さすがに3つ目は入らないのでベッドを1台撤去して介護ベッドを入れました。
介護ベッド周りもケアグッズが置けるよう空間を作りました。
倉庫と化していた洋室を片付けもう1台ベッドを置き夫婦どちらでも眠れる第2の寝室に。(※第2寝室は息子から離れて眠る熟睡寝室部屋に作り変えました)
なかなかの労力でした。
デメリット②コスト
当たり前なんですがお金はかかります。
日常生活用具の給付で通常の値段よりは安く購入できますがそれでも最低限の費用は必要です。
※個人負担額は市町村によってかわるので詳しくはお住いの市町村のHPをご覧ください。(所得制限もあり給付自体を受けられない場合もあり)
デメリット③電気を使う
電動機能を備えた介護ベッドは電気が必要です。エアマットも然り。
停電時に制限が生じる可能性があります。
最近の介護ベッドは停電時も何時間か稼働できるような充電機能はついているのでそこまで心配はしていません。
デメリット④簡単には動かせない
大きさと重さがあるのでやっぱりこの場所やーめたって簡単には移動できません。
一度決めたらなかなか動かせないのがデメリットです。
将来的に介護ベッドで寝させるならば頭の中で生活スタイルや設置場所の広さ、ベッドの幅等の色々なこと想定して部屋作りや家造りをした方がいいですよ♪
デメリット⑤掃除しにくい
普通のベッドもそうですが介護ベッド下も掃除がしにくいです。
ほこりもたまりやすいので気づいたら掃除機やコロコロをかけています。
床も拭きにくいのが現状です。
掃除しやすいように車輪を付けるという選択もありましたが結果つけませんでした。
でもつけなくて正解。
車輪を付けていたとしてもズボラなので動かさなかった気がします。
業者にも聞きましたが大きいものなので移動させることは少なく車輪を付けるご家庭はあまりいないとのことでした。
メリット①姿勢の調整がしやすい
3モーター(背上げ・脚上げ・ベッドの高さ)のおかげで楽チンに姿勢を変えることが出来ています。
モーターのボタンを押してウィーンと上げたり下げたりで姿勢完了です。
以前は畳スペースにユニクロの体にフィットするソファー+沢山のクッションをもってきて姿勢を調整したり角度をつけたりしていました。
体幹の弱い息子は体が崩れやすく保持しにくいので一発で決まらないんです。
あーだこーだとクッションを詰めてやっとちゃんとした姿勢が出来上がるのですが毎回その作業は手を取られました。(それなら座位保持椅子に座らせろっって話なんですけど笑)
今はベッド上で背もたれや脚部の高さをすぐに調整できるのでポジショニングが早くなりました。
メリット②介助しやすい
高さ調整のおかげで高い位置から抱きかかえて移動でき介助がしやすくなりました。
畳スペースから抱きあげていた時は低い位置からだったので自分の体を傷めないよう気を使いました。
ベッドからの移動で私の体への負担が軽減しました。
その他排せつや体位変換など以前と比べたら格段に息子のケアが楽になりました。
メリット③添い寝をしなくなった
添い寝で私が熟睡できるわけがない。
以前の私は寝ているか寝ていないか分からない睡眠のとり方をしていました。
毎晩息子の少しの動作にも過敏に反応して起きてしまう。
今でも夜中の体位変換や吸引はあるものの隣の自分のベッドで横になり体を休めることは出来ています。
寝転んでいる状態から息子の傍に動くのも一度ベッドに腰かけれるのでしんどくありません。
メリット④抱っこ依存から脱却
これは抱っこ依存していた私達夫婦には大きな変化となりました。
畳スペースの時は反ったり泣いたりするとすぐに抱っこ。
寝かしつけも抱っこだったのでその間何もできません。
介護ベッドを設置したことで息子1人の空間が確保されいい意味で小さな自立が生まれました。
私達夫婦も多少泣いても割り切るようになり抱っこをすることが一気に減りました。
メリット⑤私の体がラクになった
低い位置からの抱っこの上げ下げが無くなったことで介助しやすくなり自分の体もラクになりました。
メリット⑥生活にメリハリ
以前は寝る・食べる・活動する(リハビリなど)を全部畳スペースで担っていたので生活のメリハリが無くなっていました。
夜息子が畳の布団で寝ていても私達はリビングの明かりやテレビをつけていたし、息子が起きていると深夜でもリビングの明かりはつけていたし。
介護ベッドのおかげで寝室を使うようになり生活のメリハリを意識し、息子の寝る・食べる・活動することの住み分けが出来るようになりました。
介護ベッド設置のタイミングは?
介護ベッドの設置のタイミングはその家庭によって違います。
ですが反論覚悟であえて言おう!
私が考える設置のタイミングは・・・
①医療的ケアが増えた時
②第2次成長期(思春期)
この2つの時期がおすすめです。
では説明します。
設置のタイミング①医療的ケアが増えた時
医療的ケアが増えると細かな作業も増えます。
例えば物品の管理補充、医療機器の洗浄や消毒など今までなかったことをしなければなりません。
やることが増えて心に余裕もなくなってしまい医療的ケアが雑になってしまったら本末転倒です。
たかが介護ベッドですが日常の介護をラクにすることで医療的ケアも余裕をもって行えると思いました。
あとこれは私の経験からくるものですが気切の吸引や気切ケアを畳の上に寝かせて行うのはとても怖いなと感じたから。
周りに仕切りなど無く家族きょうだいの傍での吸引なんてかなり危険です。
安全に清潔に行うことが大事だし介護ベッドだと独立した空間なので医療的ケアに集中できるからです。
設置のタイミング②第2次成長期(思春期)
第2次成長期は身長も伸び体重も増えて親の介護の負担も増えます。
それに男女特有の体の変化も出てくるし骨の変形が起ることもあります。
介護ベッドは体が大きくなっても姿勢を調整しやすく介助しやすい補助機能があるので正しい位置に修正しやすいんです。
息子を見ていてここ1年でグッと大人っぽい顔つきになり身長も伸び側弯も進みました。
以前はこんなに泣かなかったのにというくらい情緒も不安定になることもあり、これが思春期か?反抗期か?と感じています。
健常の子同様に親にイライラしたり適度な距離を持ちたがったり、それは重症心身障がい児も同じかもしれません。
息子の変化により年相応に1人でベッドで寝ることも大事だと思うようになりました。
まとめ
介護ベッドを設置して1年経ちますが本当に買ってよかったです。
介護が楽になっただけでなく添い寝や抱っこ依存からの脱却に一役買ってくれますし親子の小さな自立に繋がります。
子どもが成長すれば親も年を取るわけで、多機能な介護ベッドはこれからの障がい児者のケアを楽にしてくれるアイテムの一つだと感じます。
大切な子どもの健康と幸せな生活を守るために、介護ベッドと最適な設置タイミングについてぜひ考えてみてくださいね。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
長く続く障がい児育児、ほっと一息つきながら程よく頑張りましょう♪
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